2018年4月21日土曜日

興味深い放送大学 心理学卒論:火が都市生活者の心身の状態に与える影響について

放送大学 教養学部「心理と教育コース」
平成29年度卒業論文
乾 忠之
「火」が都市生活者の心身の状態に与える影響について

乾さんの卒論は,着想から面白かった。「火」はヒトのポジティブな感情を増大させ,ネガティブな感情を低減させるという仮説を立証しようとした研究である。統計解析ソフト R を用いたデータ解析について,私が指導したので,末尾に謝辞を頂き,私自身も嬉しい。

この研究では,焚き火を使う群,ストーブを使う群に対して,火を使わない群をコントロールにして,火の効果を調べた。心理学的な尺度として,「多面的感情状態尺度」と「状態自尊感情尺度」が調べられ,生理指標として,心拍数,手指端部体温,唾液αアミラーゼ活性が調べられた。得られたデータは,分散分析(混合計画)を用いて,実験の前後差,群間差が分析された。

結果として,調査項目の中で,多面的感情状態尺度の「倦怠」について最も顕著な違いが認められ,焚き火群,ストーブ群は,それが減少し, コントロール群のみ増大した。「火」のリラックス効果を示唆する結果となった。

標本サイズ n が,それぞれ10と,あまり大きくないこともあって,残念ながら,状態自尊感情尺度と生理指標には,有意な群差は認められなかった。

比較的自由な卒論テーマ設定ができることが放送大学の最大の利点であるだろう。その意味で,乾さんがこれまで抱いてきた興味や疑問を解決するプロセスを学んだ有意義な研究であり,今後の彼の飛躍が期待される。誰か,さらにこのテーマを追求してみないだろうか?

平成29年度に,私が卒論の統計データ解析を指導した二人は,偶然にも,心理学分野だった。もう一つの卒論は,以下のページ参照

その他の統計学上の話題は,私の研究室の解説リスト参照