2017年7月11日火曜日

興味深い早稲田大学・多賀三江子の自己開示の深さの研究

多賀三江子さん(早稲田大学日本語教育研究センター)から,彼女の研究論文が掲載された早稲田日本語教育実践研究・第5号が送られてきた。

早稲田日本語教育実践研究・第5号

PDFでオンライン公開されており,ダウンロードして誰でも読める。

多賀三江子(2017)
初級日本語クラスでの「個人化作文」における自己開示の深さの分析
-「支持的風土」の醸成を知るために-
早稲田日本語教育実践研究 5: 21-37.

研究データの統計解析に当っては,私が協力し,論文末尾に謝辞を書いて頂き,私自身もこの出版が嬉しい。データ解析の相談を受けた時点で,対象者が早稲田大学日本語教育研究センターの外国人学生であることも興味深かった。

自己開示とは,Jourard, S, M(1971)の言葉を借りれば,「自分自身をあらわにする行為であり, 他人たちが知覚しうるように自身を示す行為である」となる。

ごく単純に考えれば,人間関係が深まると,自己開示のレベルも深まる(レベルが上がる)と予想される。実際そうなるのか,前述の外国人学生を対象にして,4段階のレベルで自己開示の深さを,多賀さんは調べたのである。

レベルごとの自己開示出現率は,,二項検定と Benjamini & Hochberg 多重比較法で統計解析された。その結果,自己開示が比較的深いレベル3が,2番目に有意に高い出現率となることが判明した。

学習者全体の自己開示平均出現率
多賀三江子(2017)図1より。

丹羽・丸野(2010)は,親しい友だちの場合は,レベル2よりもレベル3の開示が多いことを示している。したがって,多賀さんは,このクラスに,親しい友人と過ごしているような「支持的風土」が作られていた,と推察した。

このことは,逆に言えば,本研究は,親しい友人と過ごしているような「支持的風土」の指標として,レベル3の相対的多さが使えることを示唆している。今後,そのような観点から実証研究を行なうことが期待される。

ただし,このような学生クラスを対象とした研究では,教員の性格や教授法に影響される可能性も大きい。小学生クラスを対象とした最近の私の共同研究でも,教員の影響がどの程度あるかが今後の研究課題として残された。

尾之上高哉・井口豊・丸野俊一(2017)
目標設定と成績のグラフ化が計算スキルの流暢性の形成に及ぼす効果
教育心理学研究 65(1): 132-144.

初等でも,高等でも,この種の教育研究における教員の影響を分析できるような例が増えてほしい。