2014年5月3日土曜日

辰野ほたる祭り,今年も外来種を隠したまま,環境破壊の町の姿


2014年 第66回信州辰野ほたる祭り,6月14日開催。しかし,松尾峡のゲンジボタルは,観光用に移入された外来種である。今年も,それを隠してホタル保護育成協力金300円,さらに駐車場料金を別途徴収。

ほたる祭り期間中,ホタル発生数や発生状況を伝える辰野町観光サイト,その中の「ほたるの名所 松尾峡・ほたる童謡公園」を見ても,「ホタル保護の歴史」を見ても,観光用に外来種ゲンジボタルを放流し増やしてきたことは,今なお全く触れられていない。

これらのウェブページでは,外来種移入を隠して,あたかも,天然の(在来の)ホタルを保護してきたかのような美談ばかり記述している。このような美談は,全くのウソ,デタラメである。食品と異なり,外来種を在来種のように宣伝しても処罰されないので,それを巧妙に利用している。

外来種を何年も繰り返し移入して増やしたことは,全く書かれていないのである。私の論文(井口, 2003: 長野県辰野町松尾峡におけるゲンジボタル移入の歴史について)に書いたように,県外の業者から買ったり,もらったりしたゲンジボタルを放流・養殖して増やしたのである。しかも,その外来種の大量放流・大量養殖の結果,地元に本来住んでいた天然記念物指定当時のゲンジボタルを絶滅させてしまったのである(参照:辰野の移入(外来)ホタル 生物多様性の喪失へ)。

それどころか,辰野町役場のホタル担当者には,観光客はホタルを見にきているので、全体としてホタルが増えればいいのであって、仮に、在来ホタルが減っても構わない,という発言さえもあったのである(参照:「ホタル保護条例」が問いかけるもの

このような姿勢で,ホタル保護などと,よく言えたものである。呆れて,開いた口が塞がらない。考え方からして,環境破壊の町・辰野なのである。

同じ長野県内では,やはり県外から外来種ゲンジボタルが移入された上高地で,環境省は,それを有害種として駆除する計画を示している(朝日新聞 2014年4月10日; 信濃毎日新聞 2014年04月09日)。

上高地のゲンジボタルについても,以前から,私や福井工大グループの研究で,外来種であることが指摘されていた(参照:辰野町と上高地の移入ホタル問題)。しかし,少なくとも,辰野の外来種ホタルに関して,私や福井工大・草桶秀夫教授は,駆除を求めてはいない。駆除によって新たな生態破壊が起きる可能性もあるし,コストもかかると考えられるからである。

私たちが辰野町に要望してきたのは,外来種であることをきちんと町内外の人々に説明し,その問題点を一緒に考えてもらうこと,やみくもに外来種ホタルの数を増やすのをやめること,外来種ホタルの拡散状況を調査し,残された在来種ホタルを区別して保護すること,などである(参照:辰野の移入(外来)ホタル 生物多様性の喪失へ)。

ところが,そんなことはしたくないし,検討もしない,そもそも観光客に外来種ホタルであることを言いたくない,というのが辰野町役場の主張なのである(参照:長野県辰野のホタル再考:観光用の移入蛍で絶滅した地元蛍 松尾峡ほたる祭りの背景にあるもの)。

今年のほたる祭りでも,ホタル保護育成協力金の名の下に,300円が徴収される。この有料で見られるのが外来種ゲンジボタルであり,周辺地域に残される天然のゲンジボタルは無料で見られる。しかし,辰野町役場は,そのことには一切触れない。

かつて,辰野町観光協会の公式ツイッターでは,こんなことも言っていた。

 辰野町観光協会 (‏@tatsunomachi) (2012年6月26日18:37)

繰り返すが,辰野町では,県外業者から買ったりもらったりしたゲンジボタルを放流・養殖して増やしてきたのである。もちろん,以前は,その問題点が分からなかったという意見も聞いた,しかし,在来生態系に悪影響を与えてきたという問題が明らかとなった現在でも,何ら対策を採らずに,しかも外来種であることを隠して,有料でホタル鑑賞をさせているのである。そんな偽のホタル名所・松尾峡は,辰野町の汚点であり,恥ずべき観光地であると言える。

問題を引き起こしてきた外来種ホタル移入養殖を隠したまま,もっともらしい名前をつけたホタル保護育成協力金(300円)を徴収する辰野町役場は,生物多様性保全の観点から見れば,悪質な行政組織であると私は思っている。

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追記
辰野町に悪しき伝統として根付いた外来種商法(儲かれば外来種でも良いというホタル観光事業)に対して,文化昆虫学的(cultural entomology)観点も含めて論じたのが,以下のウェブページである。

Tatsuno, an ecologically polluted town, defiled Matsuo-kyo Sanctuary for fireflies
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追記

国が年内(2014年)にも,ゲンジボタル,メダカ,カブトムシなどで,国内外来種となっている場合の対策強化を検討し始めた(毎日新聞 2014年05月12日)。辰野町の外来種ゲンジボタル養殖についても規制してほしいところである。
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追記

2015年10月10日に,滋賀県・守山市ほたるの森資料館に私が招かれ,辰野町が守山市で購入した観光用ホタルの移入養殖の実態,辰野から他県への移出の歴史,および天竜川上流のホタルの生息変化などについて講演した。それについては,以下のブログを参照。

辰野のホタル 町おこしと保護の課題 - 滋賀県守山市・環境学習会

辰野町では,養殖した外来種ホタルが増えたからということで,新潟県南魚沼市「大月ホタルの里」に移出もしている。