2013年10月4日金曜日

ノーテンキな朝日新聞記者のつぶやき

真実を伝えようと努力しない朝日新聞記者の話である。自らは知っているのに,読者に隠そうとするのである。

少し前の話だが,今年の朝日新聞にも,辰野町松尾峡のゲンジボタルの写真と記事が掲載された(朝日新聞デジタル2013年6月19日)。

しかしながら,ここのゲンジボタルが移入外来種であることは全く触れられていないのである。松尾峡では,関西から観光用に大量移入された外来ゲンジボタルが養殖されている。それをおそらく知っての上で,敢えて「東日本有数の生息地」などと平気で言ってのける新聞記事がここにある。笑えない笑い話か,ふざけた冗談かと思うような記事である。

朝日新聞は,2008年6月17日長野・中南27面(田中洋一記者)で,本種が県外から人為的に移入放流されたものであり,生物多様性保全上問題があることを指摘しているのである。

これは過去の問題ではない。現在でも,辰野町役場,町長,町議会は,養殖中の外来ゲンジボタルへの対処法を何ら検討することなく,それが周辺の在来ゲンジボタルに与える影響も全く無視しているのである。しかも役場・町長・町議会は,この外来種の移入の歴史や問題点を観光客に隠すことを前提にして,辰野ほたる祭りを実施し続けている。

前町長・矢ヶ崎克彦氏,現町長・加島範久氏,町議・根橋俊夫氏(共産党),同じく町議・三堀善業氏らの言動を見聞きすれば,外来種ホタルであることを隠して入場料徴収という辰野町の行為が,詐欺まがいであるかのように感じる。

つまり,この外来ゲンジボタルの問題は,何ら状況が変わっていないのである。

ところが,朝日新聞の記者のツイートを見て驚いてしまった。呆れてしまった。情けなくなった。

朝日新聞東京本社写真部(@asahi_photo)(2013年6月19日14:00)


武井宏之・朝日新聞記者(@97hiro1024)(2013年6月19日15:53)

繰り返すが,松尾峡の移入外来ゲンジボタルに関しては,田中洋一記者が生息地を現地取材し,役場から説明を受けて記事を書いた2008年から,何一つ状況は変わっていない。2010年に名古屋でCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開催され,在来種保護も国際的な重要なテーマとなったが,それを経ても,なお辰野町は変わろうとしないのである。生物多様性保全を目的とする生物多様性基本法の観点からすれば,松尾峡の現状は違法状態であると言える(辰野の移入(外来)ホタル 生物多様性の喪失へ)。

それどころか,辰野町役場や議会は何ら検討すらしていない,無視を決め込んでいるのである。辰野町松尾峡で,朝日新聞の写真のような多数のゲンジボタルが見られるのは,大量の外来ゲンジボタルを業者から購入したり譲渡されたりして,移入放流した結果なのである。

県外から大量のゲンジボタルを買ったり,譲り受けたりし,それを放流・増殖させたから,現在,「東日本有数のホタル生息地」となっているのである。これも正確に言えば,「日本最大の外来ホタル養殖地」なのである

それなのに朝日新聞記者は,何事もなかったかのように風情に浸ったコメントを残している。のんきなものである。これでは,町が隠そうとしている外来種でのホタル祭り観光事業を,大新聞・朝日が手助けしているようなものではないか?

繰り返すが,松尾峡のゲンジボタルが人為的に移入された外来種であることを,辰野町は意図的に隠してきたのである。観光客に渡すパンフレットや,辰野町観光サイトでは,ゲンジボタルを県外の業者から大量移入して増やしたことも,それが在来(天然)ゲンジボタルに悪影響を与えていることも,一言も語っていない。外来ホタル養殖とその弊害を,きちんと公表し,その改善策を町内外の多くの人に考えてもらうように,辰野町に私(井口豊)が何度要望しても,町役場はイヤだと言うのである(例えば,JanJan 2010-2-22記事参照)。

辰野町観光サイトを読むと分かるが,いかにも松尾峡にいた天然のゲンジボタルを守り育てて増やしたかのような自画自賛的な観光名所として,松尾峡のホタルを紹介している。このような事実を隠蔽した辰野町の説明と,上記のような朝日新聞記事や記者ツイートを読んで,果たして,何人の人が,この町で今なお続けられている,観光産業優先の生態系破壊の問題に気づくだろうか?このような問題を放置して変わらぬ行政や政治家の姿勢を,多少なりとも大衆に伝えていくのが新聞社の使命だと私は思う。

情けない,本当に情けない。こんな朝日新聞のつぶやきは,私には,「ノーテンキ」という言葉しか思い浮かばない。

斎藤美奈子氏が,朝日新聞紙面批評(9/10)で,「他紙ならスルーしかねない話題をイヤミったらしく(?)追究し、話題を喚起するのは朝日のお家芸だが,新聞使命は批判しにくい案件にも果敢に切り込むこと」,と述べている。

辰野の外来移入ホタル問題は,まさに後者の問題なのである。辰野町の行政や政治家と同様に,この問題に知らん顔して,「虫たちの物語」だの,「詩的表現」だの,悦に入ったコメントを残す記者の気持ちが私には分らない。新聞記者として品性を欠く,とも言える。このようなコメントを残す人物は新聞記者を辞めて,小説家か芸能人にでもなったほうが良い。

特に辰野町を批判してくれというのではない。しかし,今見るここのゲンジボタルの乱舞は,紛れも無く人為的外来種なのである。それをせめて一言,文面に添えて真実を読者に伝えてほしかったし,そのような観点からのツイートもしてほしかった。

まさか,町を少しでも批判するのに腰が引けて,あのような自画自賛の誌的?コメントをしたわけではないと思いたいが・・

武井宏之記者らは,松尾峡のゲンジボタルが人為的に移入された外来種と知った上で,それに全く触れなかったのか,あるいは,それを知らなかったのか,是非教えて欲しいものである。

もし外来ゲンジボタルだと知った上で,それに一言も触れないのだとしたら,あまりにも読者を愚弄した態度ではないか。移入外来種を愛でる程度のことしか書けない記者は,物事の一面しか見ることが出来ないだろう。そのような人物が書く記事は信頼できない。

参照ウェブページ

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2014年9月14日追記

福島原発事故・吉田調書や慰安婦問題を巡って,記事取り消しだの,謝罪だのと醜態を見せている朝日新聞社の様子を見ると,辰野の外来種ホタルに関しても,正確な情報を伝えようとしない武井宏之記者らは,やはり,同じ穴のムジナ記者だなと感じる。

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2014年11月1日追記

松尾峡の外来種ゲンジボタルと鴻ノ田の在来種(天然)ゲンジボタルの比較動画が,fukuokadonax氏によって,YouTubeに投稿れている。この鴻ノ田こそ,前述の朝日新聞・田中洋一記者が現地取材した在来種ゲンジボタル生息地である。

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追記 2015年11月14日土曜日

朝日新聞が書く統計学的データの解説には,記述が正しくないもの存在する。それに関しては,私が書いた統計解説を参照。
母数(パラメータ)の意味を理解していない,あるいは,統計学的な素養が欠如する人が,今春大卒2割、進路未定 学部間差、最大5倍という記事を書いているのである。日本を代表する新聞が書く記事としては,お粗末である。

「母数」の意味は大学初級レベルであり,このような不適切な記述を見ると,科学記事のみならず,統計学的データが使われる様々な記事での,朝日新聞の信頼性を疑いたくなる。