2013年9月29日日曜日

気候温暖化とルイヨウマダラテントウ: 甲虫学会誌,高田論文から思うこと


昆虫を研究していると,やたらと亜種が増えていく種に出会うこともあるし,しばしば誤同定される種にも出会う。

前者の例が,ヘラクレスオオカブト(Dynastes hercules)であろう。これに関しては,Twitterで,昆虫専門KSLオークションが解説しているので参照すると良い。

一方,後者の例に,ルイヨウマダラテントウがある。

かつて富岡(1986)は,ルイヨウマダラテントウがグリーンタフ変動を受けなかった地域の残存種であると考えた。しかし私(井口,1988)は,その分布パターンが,第四紀最終氷期以降の地形や気候変動の影響を受けていると考え,残存種だとすれば最終氷期のものだろうと推定した。

特に,東京西郊型と呼ばれるタイプは,明治時代以降の気候温暖化や社会変化(例えば,ジャガイモ栽培の活発化)の影響を受けているだろうと考えた。

この私の説には,ほとんど反響はなかった。しかし最近になって,佐藤仁彦が,オオニジュウヤホシテントウの分布要因の一つは気温であることを示した。また片倉晴雄は,気候温暖化がルイヨウなどのテントウムシの種分化の要因になっていると解説した。

これら佐藤や片倉の研究結果を見ていると,上記の私の指摘も間違っていないと分かる。テントウムシの食性や分布を探ることで,地球温暖化の歴史や未来像が見えてきそうで興味深い。

今月の日本甲虫学会誌で,高田兼太(Takada, 2013)による,尼崎市ケーキハウスショウタニ 武庫之荘店の「柚子とホワイトチョコのムース」のテントウムシのトッピング関する論考を読んで,ふと上記の私の論文を思い出した。

なお,東京西郊型の伊豆半島付近の分布について,もし第四紀中期以前に遡って考えようとするならば,プレートテクトニクスに基づく伊豆半島衝突説も考慮に入れる必要が出てくる。上記の富岡(1986)の仮説は,生物地理に与えるプレート運動の影響を考慮に入れてないので,この点でも不十分だと言える。

伊豆半島衝突説と生物地理学の関連については,私の以下のページを参照。

伊豆諸島の生物地理とプレートテクトニクス

参考文献
井口豊 (1988) ルイヨウマダラテントウの分布パターン.昆虫と自然,23(12): 30-32. PDF(要旨)
Takada, K. (2013) Ladybug-shaped chocolate on a mousse cake bought at a bakery in Amagasaki City , Japan. Elytra (new series) 3(1): 195-198.
富岡康浩(1986) 「東京西郊型エピラクナ」の起源およびルイヨウマダラテントウの食性の地理的変異について.昆虫と自然,21(11): 18-21.


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井口豊