2013年3月10日日曜日

活断層・「塩嶺断層」の調査に対する岡谷市の姿勢: 岡谷小学校存廃と関連して


岡谷市の塩嶺病院に看護学校を設置する計画があるが,その直下には活断層が存在することが知られており,9月6日のブログでも言及した。

岡谷市・塩嶺病院直下の活断層: 岡谷市看護専門学校を設置

その後,看護学校だけでなく,特別養護老人ホームも設置する計画も出てきており(長野日報,2013年3月1日),ますます,その地質調査が重要となっている。

岡谷市議会の平成25年第1回定例会の一般質問では,今井秀実(共産党)議員が,敷地内の活断層調査の必要性に言及し,市役所の宮坂総務部長が応答した(岡谷市民新聞,2013年3月10日版でも報道)。

今井議員の質問内容は,市議会ホームページの平成25年第1回定例会のp.3で見られる。また,その質疑応答の様子は,岡谷市議会の議会放送「映像ライブラリ」のアーカイブとして,http://www.city.okaya.lg.jp/okaya/gikai/2503-07.wmvから動画がダウンロードできる。あるいは,オンラインで見るなら,私の研究室リポジトリの今井秀実議員の議会質問の動画を閲覧してほしい。

この動画の4分40秒付近に今井議員の活断層に関する質問があり,22分付近に市側の回答がある。特に,活断層関連の質問と回答部分を取り出した動画が次のものである。

video

この動画を見ると分かるが,市では産業技術総合センターのデータベースに活断層が示されていることを把握している。それにも関わらず,国土地理院の都市活断層図には明記されていないとか,調査しても活断層を特定するのは難しいとか,直ちに大きな危険性を判断するのは難しいとか,言い逃れみたいな答弁で,調査する前から問題を放棄している。しかも,調査しても特定が難しい例として挙げられたのが,原発敷地内の活断層なのである。

ここでは,便宜上,この活断層を「塩嶺断層」と呼ぶことにする。9月6日のブログでも言及したが,この塩嶺断層は,ごく最近見つかったものである。都市活断層図に載っていなくて当然である。逆に言えば,速報性に優れた産総研のデータベースのような存在こそ重要なのである。

その活断層データベースで活断層の位置が見られるので,住民は是非参考にしてほしい。塩嶺病院一帯の地層が,西北-東南に延びる複数の活断層によって切られているのが分かるだろう。

実は,塩嶺断層については,名古屋大学を中心とした変動地形研究グループの「糸魚川-静岡構造線」活断層情報ステーションにも示されている。

もし,オンラインで地図の見方が分からなければ,以下のPDF資料をダウンロードして見ると良い。
糸魚川‐静岡構造線断層帯変動地形資料集
No.2 中北部(松本-茅野間)
(平成20年1月刊行,平成22年3月修正)

この資料のp.14の写真およびp.15の地図(CN-4)を見れば,塩嶺病院のほぼ直下に活断層があることは一目瞭然である。

しかもこのデータ作成日が,平成20年1月刊行,平成22年3月修正となっている点にも注目してほしい。一方,都市圏活断層図整備一覧の51.諏訪の説明を見ると,平成10年調査,平成11年7月30日刊行となっているのである。つまり,国土地理院の都市圏活断層図は,「糸魚川-静岡構造線」活断層情報ステーションより10年も前のデータなのである。宮坂部長の市議会での答弁は,これら最近の活断層情報を軽視していると言える。

これは塩嶺病院の問題に限ったことではない。上述のとおり,宮坂部長自身が,産総研のデータベースに岡谷市の活断層情報があることを認めているのに,市の防災情報のWebページには,そのような情報源が全く示されていないのには呆れてしまう。危険な情報は,なるべく見せたくない,知らせたくない,そんな意図なのか,と勘ぐってしまう。

塩嶺断層に関して,活断層の専門家に意見を求めたり,国土地理院に最新の活断層地図情報を尋ねたりするのに,たいして時間も費用もかからないと思われる。その程度のことさえやらないのは,自然災害に対する認識が甘いと言わざるを得ない。万一,塩嶺地区で地震や豪雨による災害が起きた後に,「想定外」とは,もはや言うことはできまい。

最近,岡谷小学校が軟弱地盤のため現地存続が困難と市が判断,という報道があった。このケースでは,地盤調査を行い,その上で同小学校の現地存続が困難と結論づけられたようである。それに対して,塩嶺の看護専門学校の設立のケースでは,専門家の意見さえ求めないという対照的な様相を呈している。

ただし岡谷小学校存廃問題でも,市としては,地盤・地質の調査資料をHP等で一般公表することは避けている。岡谷小学校のあり方検討委員会でも,委員の1人から,「HP に資料を掲載しても、それを一般の人が見ても分からないと思う」(第4回 岡谷小学校のあり方検討委員会 会議録,p. 4)という,言い訳にもならないような意見が出ているから驚く。

なお,塩嶺病院を含め,岡谷市付近を通る活断層については,仙台放送のコラム「大地震に備える」第10回・活断層はどこまでわかっているか?でも,名古屋大学・鈴木康弘氏が,Google Earthの写真で断層を示して解説している。この写真にも,塩嶺病院,すなわち,岡谷市看護専門学校の直下を通る活断層が赤線で明示されているのである。

岡谷市だけでなく,諏訪湖周辺地域の住民は,「家一軒一軒と断層の位置関係が分かる」という鈴木氏の言葉に注目すべきであろう。

参考Web page
岡谷市で発見された糸魚川ー静岡線に関連する活断層: 岡谷市役所ー敬念寺断層

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2016年5月10日追記

山形県では,活断層上にある高校や警察など,県施設を公表した(山形新聞 2016年05月10日)。長野県では,上記のように,新設される看護学校の敷地内の活断層が,市議会で問題になったにもかかわらず,全く調査もされずに,新設が許可され開校されたのである。

岡谷市看護専門学校(旧塩嶺病院)の下を通る活断層は,信濃毎日新聞社編集局(1998)「信州の活断層を歩く」の諏訪・岡谷断層群の記述で,p.105の地図にも記載されている。