2010年12月20日月曜日

茅野市ミヤマシロチョウ保護をめぐって:生物多様性保全を重視した保護ができるか?


12月18日,長野県茅野市の八ヶ岳博物館で,茅野ミヤマシロチョウの会と県環境部自然保護課が,生物多様性地域懇談会を開催した(19日の茅野市民新聞に記事掲載)

私自身は初耳だったが,そこで会側から,本種の個体数維持の目的で外来の吸蜜植物移入を考えたが県が認めなかった,という経緯が明らかにされたという。

ここのミヤマシロチョウは自然公園法の指定動物(八ヶ岳中信高原国定公園の特別地域内)であるが,自然公園法には生物移入に罰則がないことや,外来生物法では特定の生物の移入しか規制してないという問題点も会側から指摘されたという。

ちなみに,本種は県天然記念物でもあるが,それを規定した文化財保護条例にも移入規制は明記されていない。

生物多様性保全の観点から言えば,他地域からの生物移入は規制されるのだが,この理念に法整備が追いつかない現状を露呈したのが,今回の懇談会であった。

2010年12月17日金曜日

2010年ふたご座流星群

2010年ふたご座流星群をカメラ固定撮影。
12月15日1時28分ころ。
写真の赤矢印の先,ふたご座のζとλの間を,左上から右下に流れたのがわかるでしょうか?
双子の弟ポルックスのひざの間付近を流れたことになります。
写真の右端がオリオン座に当たります。


肉眼では,もっと明るかったのですが,なんとも貧弱な写真になってしまった。
ファイルサイズ減らすために画質落としてあるので,よけいそんな感じです。

西湖で発見されたクニマス:生物多様性保全の観点から


秋田県田沢湖で絶滅したと思われていたクニマスが,山梨県西湖で見つかった。
朝日新聞2010年12月15日
共同通信2010/年12月15日

このニュースは嬉しい反面,移入されたものという見方もでき,実際,ネット上では,そのような意見も見当たる。

ホタルの移入問題を研究している私も,生物多様性保全という観点も含め,感想を述べる。

まず,ホタルに関しては,長野県辰野町松尾峡では,県外から観光用に移入したゲンジボタルで地元のゲンジボタルが絶滅した例がある。
http://www.ab.auone-net.jp/~biology/Tatsuno.htm

これは辰野はもちろん,近隣地域にもゲンジボタルが当時生息していたにもかかわらず,それらを採集して増やすのは大変だから(辰野町誌の記述)という安易な理由で県外から移入した結果,こうなってしまった。

今回のクニマスが西湖へ移入された理由は,はっきりしない。
単なる増殖のためなら,現在の生物多様性保全の考えからすれば安易だったと言える。

上記の朝日新聞の記事(12月15日)で,クニマス研究者・杉山秀樹・秋田県立大客員教授が,
「田沢湖のクニマスが絶滅したのは事実。いわば国内産外来種」
とコメントしているが,私もそのような感想を抱いた。

ただし,種の絶滅を避けるためなら,ベストと言えなくても,次善の策だったと思う。

最近も,静岡ー山梨間の中部横断道建設に際して,希少なアカハライモリとモリアオガエルを移住させた例がある。
http://www.ktr.mlit.go.jp/koufu/news/h22announce/h220917.pdf

生態系保護のためには,道路を作らないのがベストだろうが,作ることが前提であれば,絶滅する恐れがある生物には,このような措置もありうる。

また,数十年前には,生物移入ということは,ごく普通のことだったという研究がある。

「なぜ移入種は排除されなければならないのか? 」
瀬戸口明久

この考えからすれば,他地域へのクニマスの放流は,もっと多く場所にあったかもしれない。
今回,偶然残っていたものが偶然発見されただけ,ということかもしれない。

この西湖のクニマス,既存の生態系に影響を与えなかった,そして今も与えていないのだろうか?

希少種だけに保護することは大切だが,保護一点張りではなく,既存の生態系への影響調査もするべきだ。

西湖では,クニマス保護のため,禁猟も検討されているようである。
朝日新聞2010年12月17日

しかし,シカのように,保護しすぎて数が増えすぎ,生態系を乱す例もあることを念頭に置くべきでだ。

辰野のゲンジボタルの場合は交雑が起きず,移入ゲンジボタルばかりが増えて,在来ゲンジボタルの絶滅が起きた。

上記の朝日新聞記事によると,西湖のクニマスでも交雑は起きていないようである。

過ぎたるは及ばざるが如し,などとならないように注意して保護に取り組んでほしいと思う。

2010年12月13日月曜日

辰野町と上高地の移入ホタル問題


上高地のゲンジボタルと志賀高原のゲンジボタルは,ともに高地の温泉地に生息する。そのため,両者を同じ外来種とみなす意見が見られる。しかしながら,両者は遺伝的には全く異なる。志賀高原ゲンジボタルは長野県在来種であるが,上高地のゲンジボタルは,長野県にとって松尾峡ゲンジボタルと同じ「外来種」なのである。次のページの解説を参照してほしい。

上高地,志賀高原,辰野町のゲンジボタル:その駆除を巡って

長野県内における移入ゲンジボタルの遺伝子調査の結果が,2010年の全国ホタル研究会・志賀高原大会で7月17日に発表された。

このうち,上高地の移入ゲンジボタルに関しては,最近さらに研究が行われ,新聞にも掲載された。
上高地にホタル移入か 規制区域で「生態系に影響」懸念(中日新聞,2010年12月11日)
上高地のホタルは人が持ち込みか NPOが発表(信濃毎日新聞,2010年12月12日)

辰野町松尾峡と上高地のゲンジボタルが,人為的に移入された外来種であることは,次の論文に記されている。


遺伝子解析による移植されたゲンジボタルの移植元判別法

全国ホタル研究会誌 第43巻 (2010年) 27-32
日和佳政・大畑優紀子・草桶秀夫・井口豊・三石睴弥


要旨
辰野町松尾峡と上高地のゲンジボタルのミトコンドリアDNAのND5遺伝子を調べて移植元の判別法について検討した。

その結果,松尾峡では,自然発生ゲンジボタルとは遺伝的に異なる滋賀県のゲンジボタルが交雑を起こさず完全に定着していることが判明した。ここでは滋賀県から意図的に観光用ゲンジボタルを購入し,移入養殖していることが歴史的事実としてあり,それを科学的に裏付ける結果が出た。

また,上高地では京都から神奈川県にまたがる地域に生息する西日本グループに帰属する県外ゲンジボタルであることが判明した。移植元まで特定できなかったが,移植されたという三石睴弥の情報を裏付けた。

結果として,辰野町松尾峡と上高地のゲンジボタルは,同じ西日本型サブグループ3に属することも判明した。

福井県内のゲンジボタルの遺伝子研究結果から推定すると,十数km以上離れた所から移植を行うことは,遺伝子多様性という点から大きな問題であり,今回の長野県内のゲンジボタル移入地の研究結果もそれを示している。


*********
追記

上記のように,上高地のゲンジボタルは外来種であるので,2014年になって,環境省は駆除を検討し始めている。
朝日新聞 2014年4月10日
上高地の外来ホタル駆除へ 環境省

信濃毎日新聞 2014年04月09日
上高地、蛍の光と決別 「生態系に懸念」駆除へ

辰野町・松尾峡では,観光用に移入された外来種ゲンジボタルのために,本来そこにいた在来ゲンジボタルが絶滅するという事態を引き起こしている。ホタルが舞う美しさだけに惑わされないでほしい。

なお,今後の上高地の自然保護計画に関しては,中部山岳国立公園・上高地連絡協議会による上高地ビジョン2014(仮称)に詳しく書かれている。この中で,p.27に,
ゲンジボタルなど外来種の侵入・定着状況などを調査し、効果的な防除方法を検討
と記されている。

*********
追記

国が年内(2014年)にも,ゲンジボタル,メダカ,カブトムシなどで,国内外来種となっている場合の対策強化を検討し始めた(毎日新聞 2014年05月12日)。辰野町の外来種ゲンジボタル養殖についても規制してほしいところである。

*********
追記

上高地の外来種ゲンジボタル駆除を巡っては,2014年8月17日に,テレビ朝日・サンデースクランブル美しいホタルを駆除へ・夏の風物詩に何がで,詳しく報道された。この番組に私も出演し,外来種ホタルの悪影響に言及した。

参照
辰野の移入(外来)ホタル 生物多様性の喪失へ
長野県辰野のホタル再考: 観光用の移入蛍で絶滅した地元蛍 松尾峡ほたる祭りの背景にあるもの

2010年12月6日月曜日

夕暮れ時の諏訪湖の白鳥

12月4日,岡谷市横川川の河口に漂う白鳥。
3羽飛来したうちの1羽。

遠くに見える雪をかぶった山々は八ヶ岳。