2010年11月27日土曜日

リニア新幹線が東海地震対策に?

朝日新聞・経済気象台(2010年6月24日)で,

「リニア新幹線は東海地震対策の柱の一つであることを忘れてはならない」
http://www.asahi.com/business/topics/column/TKY201006230482.html
と主張しているのには驚いた。

気象庁は,東海地震に際して,山梨・長野南部で震度6以上を想定している。
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/hantekai/q5/q5.html

また,著しい被害が予想される地域が、大規模地震対策特別措置法(大震法)により「地震防災対策強化地域」として指定され,山梨から長野にかけてリニアのルート沿いが,その地域なのである。
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/hantekai/q1/q1.html

山梨県が想定した各種被害の地域を見ても,リニア通過ルートが引っかかってくることがわかる。
http://www.pref.yamanashi.jp/shobo/documents/96494003966.pdf

上記の経済気象台では,東海地震によって東名高速道路や東海道新幹線の被害を受ける可能性を強調しているが,山梨・長野南部の被害想定には全く触れていない。

そもそも,東海地震対策を言うなら,北陸新幹線のほうが安全であるが,こちらの早期完成には全く触れてない。

この経済気象台の筆者は,リニアが受ける地震被害の危険性を隠して,メリットばかり強調している。

2010年11月19日金曜日

長野県クマ捕殺か放獣か,第2期特定鳥獣保護管理計画をめぐって

信濃毎日新聞11月18日32面(地域面)によると,長野県ではクマ捕殺か放獣か,地域で対応が大きく異なるという。

北信(県北部)では、今年97頭捕獲し全殺処分,「放獣に住民の理解が得られない」という。

一方、木曽地域(県南西部)では、68頭捕獲し24頭放獣(35%),「初めて捕まったクマは放獣する方針,住民も理解している」という。

「捕殺か放獣か以前に,地元の人たちとクマを防ぐ対策を」と,クマ対策員のコメント。この点は私も全く同感である。

疑問に思ったのは,「クマ捕殺か放獣か,明確な基準がない」という記者のコメントである。

長野県で策定した第2期特定鳥獣保護管理計画(ツキノワグマ)(平成19年4月1日~平成24年3月31日)
http://www.pref.nagano.lg.jp/rinmu/shinrin/04chojyu/08_kuma2kikeikaku/bear2ki.pdf
によると,

移動放獣の基準・(ア)殺処分対象個体,として(p20)
捕獲された個体のうち、次のいずれかに該当する個体については殺処分としてもやむを得ない。

  • 人身被害を起こした個体
  • 日中住宅地に出没しているなど、人間を恐れない個体
  • 電気柵の設置等、防除しても壊して被害を出すなど、農作物への執着が強く学習効果が期待できない個体
  • 以前に放獣した個体(錯誤捕獲による個体を除く。)で被害防除をしたにもかかわらず、被害を再発し、再度捕獲されたもの
 と書かれている。

この基準は知られているのだろうか?少なくとも一般県民は,この第2期特定鳥獣保護管理計画(ツキノワグマ)の存在すら知らないのではないか。

前述の信濃毎日新聞記事によると,長野県では今年すでに,クマ捕獲上限数151頭の2倍以上の325頭捕殺しているという。

しかし,第2期特定鳥獣保護管理計画をまずPRしなければ,その場その場の判断や住民感情で,いくらでも捕殺されてしまうだろう。
 
富山や岐阜では,クマ捕獲上限を超え,県が狩猟自粛要請している有様である。
 
毎日新聞・地方版 2010年11月12日http://mainichi.jp/area/toyama/news/20101112ddlk16040518000c.html
 
長野県でも,せっかく第2期特定鳥獣保護管理計画(ツキノワグマ)を定めたのだから,まずそこに示された捕獲上限や殺処分基準を県民に広く知ってもらうことが重要であろう。しかし,少なくとも一般人に対して県が積極的PRしたという話は聞かない。また,計画策定に当たって公聴会が開かれたはずだが,どのくらいの県民意見を集約できたか分析されてないようである。形式的には公聴会をやった,ということであろうか?
 
これでは,クマが人里に多数出現するようになってから,殺せ,殺すな,という議論が沸騰しても,第2期特定鳥獣保護管理計画(ツキノワグマ)は機能しないであろう。
 
前述の信濃毎日新聞記事では,この保護管理計画について言及がなかった(取材してない?)ので,私は信濃毎日新聞社に質問のメールを送った。
 
長野県が「生物多様性地域戦略」を策定中の今,私は専門のホタル保護を通じて,県自然保護課に色々意見している。その際も,計画内容を県民ひとりひとりに知ってもらうという努力が県には足りないように感じている。これは私だけの感想ではなく,11月10日に長野県庁で開かれた「生物多様性長野県戦略策定委員会」において,複数の委員からも似たような感想が出された。

皆さんは,第2期特定鳥獣保護管理計画に関する県の対応をどう思うだろうか?

2010年11月12日金曜日

生物多様性長野県戦略策定委員会を傍聴してきました

11月10日に長野県庁で開かれた「生物多様性長野県戦略策定委員会」を傍聴してきた。



委員から,千葉県ではタウンミーティングが開催されていることや,生物多様性と言っても一般人には理解できないなどが取り上げられ,県のPR不足が指摘された。私も同感。しかし,A4版60ページにもおよぶ「長野県の生物多様性の概況(中間報告)」をまとめあげた努力には敬意を表したい。これは複数の委員も賞賛していた。

ただし,ゲンジボタルの地理的変異の記述が不正確であったので,委員会後,自然保護課の菅谷行博・課長に指摘され,これに関し,私から論文と資料を自然保護課の窪田達央氏に送信した。同課長からは,COP10を機会に長野県でも生物多様性保全について広く知らせたいとの個人的談話も得る。ぜひ,お願いしたい。

概況(中間報告)の中には,辰野町に外来種の巻貝コモチカワツボが生息しているとの記述もあった。コモチカワツボに関しては,国立環境研究所の侵入生物データベース「コモチカワツボ」を参照して欲しい。

本種は,カワニナと一緒に移入されることが多く,全国ホタル研究会でも警告している(ホタル情報交換)。また,滋賀県では条例で指定外来種になっている(ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例第27条第1項)。山口県でも県自然保護課が,ホタル保護に関連して,繁殖に注意を促す(ホタルの餌にご注意を)。

もし,辰野でもホタル養殖事業関連で移入されたなら,大きな問題だと思う。もしそうでなくても,県内最大(国内でも最大)のホタル養殖地・辰野で外来種のコモチカワツボが見つかったということ自体も問題である。それは,ホタルが多ければカワニナも多く,従って,コモチカワツボも増えやすい,という状況が生まれる可能性があるからだ。辰野町松尾峡の移入ホタルは,下流の在来ホタルにも影響を与え始めている(辰野の移入(外来)ホタル 生物多様性の喪失へ)。

町役場は,コモチカワツボ繁殖抑制に取り組んでもらいたいし,県からも要請してほしいが,ともにその気配は無い。 悲しいことだ・・・。

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2016年4月11日追記

2011年に作成された長野県生物多様性概況報告書では,辰野町松尾峡の外来種ゲンジボタルも取り上げられた。

そして,
辰野町に移入されたゲンジボタルは在来の集団を駆逐し、この地域特性を攪乱しているとの指摘がある(p.55–56)
と記載された。


2010年11月7日日曜日

長野県生物多様性地域戦略は,いかにも,お役所目線では?

朝日新聞の長野県面(2010年10月31日)で,同県が生物多様性地域戦略の策定に着手し,それに関する懇談会の開催を希望する団体を募集していることが取り上げられた。
http://www.pref.nagano.jp/kankyo/hogo/biodiv/youryou.pdf

しかし約2ヶ月たっても,応じてきた団体は少ない,とのことである。

ある森林保護団体は「いきなり生物多様性と言われてもよく分からない」と話し,県自然保護課は「趣旨がうまく伝わっていないのかも」と戸惑いを見せている,とのことである。

長野県自然保護課の発想は,いかにも上から目線で,県民に一方的に要請しているだけのような気がしてならない。

例えば千葉県の場合,「生物多様性ちば県戦略」の策定に当たっては,

まず,H18年にタウンミーティングが県内各地域で20回開催され,H19年に県民会議が設置され,戦略の内容が提案された。

「行政が素案を示すのではなく白紙の段階から政策提言」が行われたという。
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/initiatives/docs/u001/sub_c003/06.pdf

県民会議実行委員は,その後も随時募集され,団体であろうと個人であろうと,誰でも登録できるようになっている。
http://www.pref.chiba.lg.jp/syozoku/e_shizen/tayosei/kenmin/bosyu22.html

一方,長野県の場合はどうだろうか。

生物多様性戦略のタウンミーティングなど聞いたことがない。
私が見逃してるのかもしれないが,少なくとも,県内各地で行われたということはないようだ。

また,長野県生物多様性地域懇談会は,なぜか,「5名以上の団体で申し込み」となっている。
http://www.pref.nagano.jp/kankyo/hogo/biodiv/youryou.pdf

このように,長野県生物多様性地域戦略の策定に当たっては,県民ひとりひとりに目を向け,全員に参加してもらうという意識が希薄なのである。

相撲を知らない人を呼んできて,「土俵を作ったから,相撲をとれ」と言っているようなものだろう。

これでは,前述の森林保護団体の「いきなり生物多様性と言われてもよく分からない」という感想も,当然である。

長野県自然保護課は,

1.生物多様性と何か
2.その保全に当たっては,何が問題となっているのか
3.私たちに何ができるのか

を,県内各地に出向くなり,市町村役場に頼むなりして,県民に「直接説明」すべきであろう。

そうしなければ,生物多様性地域戦略の策定は,結局,役所の仕事,県民には直接関係ないこと,となってしまう気がする。


2010年11月5日金曜日

八戸北高校,COP10生物多様性交流フェアでゲンジボタルDNA研究発表


2016年7月11日追記
7月8日に始まったTBSの新しいドラマ・神の舌を持つ男,第1話「殺しは蛍が見ていた」のホタル関連部分は,私が監修をした。

その中で,主人公らの後ろに設定されたホタル研究のポスターのひとつに,このブログで述べる八戸北高校の研究成果が取り上げられ,ちらっとだが,テレビに出た。ただし,ストーリーはフィクションなので,八戸北高校の名称は出なかった。

以下のページ参照。

ドラマ神の舌を持つ男・殺しは蛍が見ていた,辰野町がモデル

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生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)関連イベント「生物多様性交流フェア」で,青森県立八戸北高校の生徒がゲンジボタルの遺伝子研究の成果を発表した。

http://www.daily-tohoku.co.jp/kikaku/tyouki_kikaku/report/report_188.htm

全国各地のゲンジボタルのDNAを調べて,在来のものか,移入されたものかを判別するという研究。

生物多様性保全が重視される今日,若い世代にこのような研究をしてもらったり,それに興味を持ってもらうことは非常に大切である。

指導したのは,福井工業大の草桶秀夫教授。
草桶氏は長野県辰野町の移入と在来ゲンジボタルのDNAを初めて調べた研究者でもある。

従来,このような移入が行われると,在来種との間での交雑が問題となる。
しかし辰野町松尾峡の場合,交雑は起きず,移入したゲンジボタルが在来ゲンジボタルを滅ぼしてしまったことを明らかにした。

つまり松尾峡では,地元のゲンジボタルを保護して増やしたのではなく,県外から移入して増やしたことを遺伝的にも明らかにしたのである。

辰野の結果も含め,今回の八戸北高の成果を,日本のゲンジボタルの多様性を保全する上で役立ててもらいたい。

八戸北高は文部科学省指定のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)。
長野県でゲンジボタル研究に関わる自分としては,長野県内のSSHにもこのような研究をしてほしかった。

この研究のことは,私の地元,諏訪地域の市民新聞グループ各紙にも掲載された。
母校,諏訪清陵高校もSSHだが,あまり関心ないようだったが・・・