2010年10月31日日曜日

生物多様性無視!へイケボタル生息地を潰して作られた辰野町ホタルの里の遊技場


辰野町ほたる童謡公園:自然破壊・生物多様性喪失の象徴

2016年4月7日追記

2014年に,数千万円かけて新たな大型遊具施設ができている。それについては,次のブログ参照。
松尾峡 ほたる童謡公園 こんなモノいらない辰野町

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前回のブログ
生物多様性を無視した辰野町ほたる祭り駐車場
に引き続き,下の写真で,ヘイケボタル生息地を潰して作られた辰野町松尾峡の遊技場(観光施設?)を紹介する。ここはそれまで水田地帯でヘイケボタルの生息地であった。

この施設の向こう側が,観光客の訪れるゲンジボタル養殖地である。観光客は,この施設の横を通ってホタルを見に行く。

ほたる童謡公園は生態系破壊,生物多様性喪失の象徴である。

ほたる童謡公園.自然破壊・生物多様性喪失の象徴でもある.

この遊戯場は,寒さ厳しい冬季には,何の役にも立たない。実際,現在はさび付いて「使用禁止」となっている遊具もある。

ヘイケボタルは冬季間,水が引けた水田地帯で冬眠することが知られている(三石暉弥,1990,ゲンジボタル.信濃毎日新聞社などを参照)。そのような場所を潰して,そしてヘイケ(たぶん幼虫)を殺して,成り立った施設なのである。

下の写真で,この施設から道路(観光客が通る道)を挟んだ北側(上流側)の風景を見て欲しい。のどかな田園地帯である。上の写真の施設も,以前は,このような風景だった。

ほたる童謡公園周辺の環境

そもそも,この田舎町,この写真のような水田地帯や野原の中で子供達に遊んでもらう方法を考えるべきだったあろう。前回紹介した駐車場同様,この遊技場も町が公共施設として建設したものである。何のための遊技場なのか?駐車場同様,観光用ゲンジボタル養殖優先の町の姿がここにある。

ホタルの里,ホタル保護の町,が聞いて呆れる。

長野県公式観光ウェブサイトでは,この施設を含む場所を
「小さな生物の生活環境を守り、自然に生息する空間を創出しています。」
と紹介。

おかしな論理ではないか?

小さな生物の生活環境を守るつもりなら,元々このようなものは必要ない。長野県の自然保護の意識は,こんなものだったのか。情けない・・・。

ほたる観光客は,ホタル保護育成協力金として300円徴収される。しかし,こんな生態破壊施設の維持費にそれが使われないことを,私は切に願う。

さらにこの公園,ホタルシーズン以外には,パラグライダー愛好家たちの着陸場として利用され,それを町も黙認してきたのである。その結果が,最近のパラグライダーの女児激突事故。いったい,何のための,誰のための公園作りだったのか・・

あるサイトでも,この童謡公園の生態破壊を記している人がいた。

辰野ほたる祭りでエコの話
保護する蛍もゲンジホタルのみであり、地元のもともといたヘイケボタル・クロマドボタルなどの違う種の蛍については無視され、それらの生活環境が著しく損なわれてきた
私も全く同感である。

2010年10月22日金曜日

生物多様性を無視した辰野町ほたる祭り駐車場


辰野ほたる祭りの駐車場となる,ほたる童謡公園駐車場である。松尾峡ゲンジボタルは観光用に移入養殖された外来種である。その外来種養殖事業の結果として,ここに本来生息していた在来ゲンジボタルは絶滅してしまった。
辰野町役場は,それを隠して,地元のホタルを保護し増やしてきたと宣伝している(辰野町観光サイト)。その上で,役場は観光客から,ホタル保護育成協力金や駐車場料金を徴収している。



辰野町ほたる童謡公園のホタル観光客用駐車場。かつては水田で,ヘイケボタルの生息地でもあったが,ゲンジボタル観光事業の目的で駐車場と化した。ホタル祭期間中は有料となり町の収入源となる。1990年代に水田地帯であったことは,国土地理院の古い航空写真で見られるので比べてほしい。

http://archive.gsi.go.jp/airphoto/ViewPhotoServlet?workname=CB911&courseno=C9&photono=6

水田の維持管理は大変だろう。ヘイケはゲンジに比べ見劣りし観光目的に適さないから,死滅しても気にしない人も多いだろう。観光客も近くに駐車場があれば楽だろう。さらに有料駐車場とすることで経済的利益も生むだろう。

しかしながら,ホタルの里,ホタル保護の町を標榜するならば,観光客に無理してもらっても,ヘイケボタル生息地もきちんと保護すべきだった。90年代は既に生物多様性保全が重視されていたにも関わらず,ここは経済・観光優先の事業だった。

このように,外来種ホタルを地元ホタルと称して養殖し,観光客集めをする辰野町の姿は,昨年7月8日に放送されたTBSドラマ「神の舌を持つ男」,第1話「殺しは蛍が見ていた」のモデルにもなった。それについては,私の研究室ブログ参照。

2010年10月15日金曜日

生物多様性地域戦略策定の足取り重く

読売新聞(2010年10月8日)によると,「生物多様性地域戦略」を策定した都道府県は8道県にとどまる,とのこと。
http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20101008-OYT1T00766.htm

長野県の場合も,
「戦略として示せる状態になっていない」
との回答を県自然保護課から得た(10月1日)。

COP10が開催される愛知県の隣県であり,上流にも当たる長野県として,遅すぎる!!


2010年10月9日土曜日

地域ぐるみによるホタル保全活動の促進に関する研究―滋賀県立大学卒業論文


福神啓太(2009)地域ぐるみによるホタル保全活動の促進に関する研究―滋賀県守山市を対象として―滋賀県立大学環境科学部卒業論文

この論文は,タイトルには,滋賀県守山市を対象として,と書かれているが,実際には,全国の自治体のホタル保全活動の歴史,方法,現状などを丹念に調査して示したものである。 指導した井手慎司教授のウェブサイトからPDFを自由にダウンロードして読めるので,ここで詳細をコメントするより,実際に目を通してもらうのが良いだろう。
 http://csspcat8.ses.usp.ac.jp/lab/ideken/sotsuron/f-08fukujin-soturon.html

私自身の研究を含め,ホタルの生物学的研究は多いが,日本各地のホタル保全活動を調査した研究は非常に少ない。その意味で特筆すべき論文であり,特に生物多様性保全が重視される昨今において,生物研究者にも読んでもらいたい。研究者でなくても,ホタル保護に関心ある方々は,もし全文(93ページ)読むのが面倒ならば,要旨の部分だけでも読むと良いだろう。

本当は,福神氏に全国ホタル研究会で発表してもらいたかったが,それは実現してない。近いうちに,全国ホタル研究会の会誌や情報誌で,私が取り上げるつもりである。

調査対象となった自治体はもちろん,福神自身もホタルを観光と環境のシンボルと捉えていることが分かる。しかし欲を言えば,前述の通り,生物多様性保全が重視される昨今において,この点からの調査考察が欲しかった。 例えば第6章では,長野県辰野町のホタル保護について書いているが,県外からゲンジボタルを大量に移入し,それを養殖して増やしていることについて全く触れてない。本論文を公表後,この事実を指摘された井手教授が移入を示す論文の一つを追記したのが,P73の(注)である。

ただしこの点は,生物科学研究所のウェブページ
辰野の移入(外来)ホタル 生物多様性の喪失へ
あるいは,辰野町の自然保全のページ
長野県辰野のホタル再考: 観光用の移入蛍で絶滅した地元蛍 松尾峡ほたる祭りの背景にあるもの
にも書いたように,辰野町役場がこれまで外来種ホタル移入を隠してきているのが実情なので,著者を責めるのは酷かもしれない。しかし, ゲンジボタルには顕著な地理的変異があるため,その移動は全国的にも問題視されており,環境省の調査でも地域個体群維持を損なう懸念が指摘されている(環境庁自然保護局生物多様性センター,2000, 生物多様性調査,遺伝的多様性調査報告書)。

特に辰野の場合,
  1. 県外からのゲンジボタル移入によって,かえって在来ゲンジボタルが絶滅してしまったこと
  2. この影響は下流の在来ゲンジボタルにまで及びつつあること
  3. にもかかわらず,町役場は観光優先で在来ゲンジボタル保護対策を採らないこと
などの問題点が指摘されている。

今後,福神氏あるいその後輩が,各地のホタル保護の実態を調査しようとするならば,移入があったかどうか,また単なる「ホタル保護」ではなく,「地域個体群保全」を念頭においているかどうかも是非調べてもらいたい。

今年(2010年)は,名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催される。この条約やそれに対応する生物多様性基本法(平成20年6月6日公布施行)でもは,種内変異まで含め保護することが重視されている。ホタルを保護する主体が市町村など地方自治体ならば,少なくともこの条約や法律の趣旨を知っているべきであろう。しかし果たして理解してるのかどうか,そんな点を調べる研究もしてほしい。

ちなみに,生物多様性基本法公布施行後,約1ヶ月たって,そのコピーを辰野町役場に持っていって見せたところ,ホタル養殖担当者は,このような法律が国会で議論されてきたことも,その内容も,公布施行されたことも全く知らなかった。こんな状況でもホタル保護を長年言い続けた自治体(この場合,辰野町役場)があったこと知るべきである。

松尾峡は,今や,外来種ほたるの名所なのである。しかも,ほたる保護にも教育にも役立たない金属遊具を大金(たぶん税金)を投じ,わざわざ緑地を潰して建設するという尋常でない行政が継続している。それについては,次のブログを参照して欲しい。
松尾峡 ほたる童謡公園 こんなモノいらない辰野町