2018年5月7日月曜日

高田兼太のハサミムシ「ちんぽきり」論文がYouTubeに

日本を代表する文化昆虫学者である高田兼太の論文に,ハサミムシの俗称「ちんぽきり」を取り上げたものがある。

高田兼太(2013)
ハサミムシの不名誉な俗称
きべりはむし,36 (1): 20-22

Kenta Takada (2013)
Vulgar dialect names of earwigs used in Kansai Region, Japan
Kiberihamushi. 36 (2): 20–22.

この論文を国際的にも広く知ってもらおうと思い,英語版 Wikipedia の EarwigIn literature and folklore の項目に,私が簡単な解説を付け加えた(2017年1月7日 (月) 10:08; Iguchi-Y)。

In some regions of Japan, earwigs are called "Chinpo-Basami" or "Chinpo-Kiri", which means "penis cutter". Kenta Takada, a Japanese cultural entomologist, has inferred that these names may be derived from the fact that earwigs were seen around old Japanese-style toilets.

最近,気づいたのだが,YouTube で, R JOHN 氏がその内容を取り上げているではないか!!

Earwig Penis Cutter Myth or Reality

ハサミムシ「ちんぽきり」神話について広く知ってもらえるきっかけとなっていることを実感している。

2018年4月21日土曜日

興味深い放送大学 心理学卒論:火が都市生活者の心身の状態に与える影響について

放送大学 教養学部「心理と教育コース」
平成29年度卒業論文
乾 忠之
「火」が都市生活者の心身の状態に与える影響について

乾さんの卒論は,着想から面白かった。「火」はヒトのポジティブな感情を増大させ,ネガティブな感情を低減させるという仮説を立証しようとした研究である。統計解析ソフト R を用いたデータ解析について,私が指導したので,末尾に謝辞を頂き,私自身も嬉しい。

この研究では,焚き火を使う群,ストーブを使う群に対して,火を使わない群をコントロールにして,火の効果を調べた。心理学的な尺度として,「多面的感情状態尺度」と「状態自尊感情尺度」が調べられ,生理指標として,心拍数,手指端部体温,唾液αアミラーゼ活性が調べられた。得られたデータは,分散分析(混合計画)を用いて,実験の前後差,群間差が分析された。

結果として,調査項目の中で,多面的感情状態尺度の「倦怠」について最も顕著な違いが認められ,焚き火群,ストーブ群は,それが減少し, コントロール群のみ増大した。「火」のリラックス効果を示唆する結果となった。

標本サイズ n が,それぞれ10と,あまり大きくないこともあって,残念ながら,状態自尊感情尺度と生理指標には,有意な群差は認められなかった。

比較的自由な卒論テーマ設定ができることが放送大学の最大の利点であるだろう。その意味で,乾さんがこれまで抱いてきた興味や疑問を解決するプロセスを学んだ有意義な研究であり,今後の彼の飛躍が期待される。誰か,さらにこのテーマを追求してみないだろうか?

平成29年度に,私が卒論の統計データ解析を指導した二人は,偶然にも,心理学分野だった。もう一つの卒論は,以下のページ参照

その他の統計学上の話題は,私の研究室の解説リスト参照

2018年2月27日火曜日

興味深い心理学卒業論文:思春期の睡眠と大学生の自尊感情について

玉川大学教育学部教育学科の小泉緑さんから,卒論が完成したとの連絡があった。SPSSを用いた統計データ解析について私が指導したので,末尾に謝辞を頂き,私自身も嬉しい。

玉川大学教育学部
平成29年度卒業研究論文
指導担当 高平小百合教授

思春期の睡眠と大学生の自尊感情について

教育学部教育学科
小泉 緑

大学生を対象にして,中学時代と現在の睡眠状況が,現在の自尊感情と社会的スキルにどのように影響しているかを分析したものである。

睡眠の質は Pittsburgh Sleep Quality Index (PSQI),社会的スキルは Kiss-18,自尊感情は Rosenberg 尺度に基づいて測定された。小泉さんからデータを渡されたとき,これらの尺度について私も知っていたので,非常に興味を覚えた。特に, Rosenberg 尺度は,日本でも非常に多くの研究で使われている。ただし,社会的スキルは有意な違いが出ないのではないか,という予感がした。

因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行い,社会的スキルについては,4個の因子(感情抑制,高度なコミュニケーション,初歩的なコミュニケーション,計画)を抽出し,自尊感情については2個の因子(自尊心,自己拒否)を抽出した。

社会的スキルについては,やはり,いずれの因子も睡眠障害とは有意な関連を認めなかった。一方で,自尊感情尺度の自己拒否因子には,睡眠障害と有意な関連が認められた。睡眠障害があると,自己拒否の傾向が強くなるのである。しかも,中学時代には睡眠障害が無く,大学生になってからそれが現れると,自己拒否感が強くなるのである。なお,多重比較では,、Ryan-Einot-Gabriel-Welsch 検定が用いられた。

小泉さんのデータが見事に活用され,苦労が報われた研究結果と言えよう。

平成29年度に,私が卒論の統計データ解析を指導した二人は,偶然にも心理学分野だった。もう一つの卒論は,以下のページ参照

その他の統計学上の話題は,私の研究室の解説リスト参照

2018年2月26日月曜日

ピロリ菌除去と胃症状の改善を調べた興味深い研究


ピロリ菌 Helicobacter pylori は,胃ガンとの関連性が指摘されて,最近テレビや新聞でも,しばしば取り上げられる話題である。

そのピロリ菌の除去が,実際に,胃症状の改善にどの程度役立つかを調べたのが,小熊らの研究である。

小熊一豪ほか(2017)
Helicobacter pylori 除菌前後における消化器症状の検討
Progress of Digestive Endoscopy, 91(1): 52-56.

私は,小熊氏から統計データの解析支援を要請された。調査対象となった症状は,胃痛,胃もたれ,胸やけ,膨満感,食欲不振,げっぷ,胃酸逆流,吐き気の8種類であった。

データを見せられる前には,この中から2,3種類の症状は改善するだろうと思っていた。しかし,実際にデータを渡されて統計解析してみると,これら全てが,ピロリ菌除去後には,有意に改善されていた。逆に言えば,これらの症状に悩む人々が,実はピロリ菌感染の影響を受けている例も多いだろうと推察された。

これらの症状に長く悩んでいる人は,是非,ピロリ菌感染の検査を受けて欲しいし,その感染が明らかになったら,積極的に除去してもらうことを勧めたい。

その他の統計学上の話題は,私の研究室の解説リスト参照

白馬村の天然記念物「神城断層」:2014年長野県神城断層地震の痕跡

2014年11月22日長野県北部で発生したM6.7の地震では,糸魚川-静岡構造線系の活断層「神城断層」に沿って,白馬村を中心に大きな被害が出た。

その地震よって生じた撓曲構造の一つが,2015年3月5日に,白馬村の天然記念物「神城断層」に指定された(白馬村行政ホームページ,白馬村指定文化財)。

しかしながら,この行政ページには,その断層の位置図が掲載されていないので,その位置が分かりづらい。しかも,これが白馬村天然記念物だということ自体が,あまり知られていない気がする。

まずここに Google マップで,その位置を示す。白馬村,城山の西側,共和工業(株)の敷地内に,その天然記念物の断層がある。



神城断層地震から3年経た2017年10月11日に,白馬村における地形と植生の現状を,私は調査した(井口,2017)。そのとき,天然記念物「神城断層」は,次の写真のように,ビニールシートで覆われていたが,撓曲構造がそのまま残され保存されていた。写真奥に見えるのが城山であり,城山の南西側から北東に向かって撮影されたものである。東側が隆起した神城断層の活動状況が残されている。

白馬村天然記念物「神城断層」

Google マップの航空写真でも,この天然記念物「神城断層」の所在がよくわかる。



日本活断層学会2017年度秋季大会で,岡田(2017)は,日本各地で活断層観察施設が充実していくことの重要性を強調した。しかし,残念ながら,白馬村の天然記念物「神城断層」は,ビニールシートで覆われただけであり,説明の看板すらなかった(2017年10月11日時点)。せっかく村の天然記念物として保存するのだから,せめて説明看板を設置してほしかった。

ウィキペディアの神城断層の項目にも,天然記念物「神城断層」の場所の記述がなかったので,役場ホームページのリンク先とともに,追記した(2018年3月4日(日)08:13,Iguchi-Y)。

参考文献
井口豊 (2017) 2014年長野県神城断層地震後の地形と植生の変化. 日本活断層学会2017年度秋季学術大会講演予稿集: 102-103.
岡田篤正 (2017) 活断層資料の集中的な保管・収集に向けた資料館の必要性. 日本活断層学会2017年度秋季学術大会講演予稿集: 34-35.
下田力・大塚勉・佐藤翔・加藤祐輝(2016)長野県白馬村における神城断層の地形を利用した歴史遺構.信州大学環境科学年報 38: 79-88.

2017年7月23日日曜日

記念バッジのホタルキャラ:全国ホタル研究会大会・新潟県関川村

第50回全国ホタル研究会新潟県関川村大会

全国ホタル研究会大会も,今年,節目となる50年を迎え,6月30日-7月2日に新潟県関川村で開催され,私も発表してきた。

井口豊「志賀高原石の湯におけるゲンジボタル個体群の経年変化」

そのとき頂いたのが,下に示した記念バッジである。

全国ホタル研究会大会の記念バッジ

かわいいホタルキャラなのだが,あとで気づいたことが,4本足であることだ。ふと,テレビアニメの「みなしごハッチ」を思い出した。ただし,このアニメも,悪役昆虫は6本足で登場する,とYahoo!知恵袋では解説していた(みつばちハッチはなぜ手足が4本なのですか。

おじゃる丸の電ボでさえ6本足なのに,ゆるキャラとはいえ,ホタル研究会の記念バッジで4本足にする特別な意図があったのだろうか?

2017年7月11日火曜日

興味深い早稲田大学・多賀三江子の自己開示の深さの研究

多賀三江子さん(早稲田大学日本語教育研究センター)から,彼女の研究論文が掲載された早稲田日本語教育実践研究・第5号が送られてきた。

早稲田日本語教育実践研究・第5号

PDFでオンライン公開されており,ダウンロードして誰でも読める。

多賀三江子(2017)
初級日本語クラスでの「個人化作文」における自己開示の深さの分析
-「支持的風土」の醸成を知るために-
早稲田日本語教育実践研究 5: 21-37.

研究データの統計解析に当っては,私が協力し,論文末尾に謝辞を書いて頂き,私自身もこの出版が嬉しい。データ解析の相談を受けた時点で,対象者が早稲田大学日本語教育研究センターの外国人学生であることも興味深かった。

自己開示とは,Jourard, S, M(1971)の言葉を借りれば,「自分自身をあらわにする行為であり, 他人たちが知覚しうるように自身を示す行為である」となる。

ごく単純に考えれば,人間関係が深まると,自己開示のレベルも深まる(レベルが上がる)と予想される。実際そうなるのか,前述の外国人学生を対象にして,4段階のレベルで自己開示の深さを,多賀さんは調べたのである。

レベルごとの自己開示出現率は,,二項検定と Benjamini & Hochberg 多重比較法で統計解析された。その結果,自己開示が比較的深いレベル3が,2番目に有意に高い出現率となることが判明した。

学習者全体の自己開示平均出現率
多賀三江子(2017)図1より。

丹羽・丸野(2010)は,親しい友だちの場合は,レベル2よりもレベル3の開示が多いことを示している。したがって,多賀さんは,このクラスに,親しい友人と過ごしているような「支持的風土」が作られていた,と推察した。

このことは,逆に言えば,本研究は,親しい友人と過ごしているような「支持的風土」の指標として,レベル3の相対的多さが使えることを示唆している。今後,そのような観点から実証研究を行なうことが期待される。

ただし,このような学生クラスを対象とした研究では,教員の性格や教授法に影響される可能性も大きい。小学生クラスを対象とした最近の私の共同研究でも,教員の影響がどの程度あるかが今後の研究課題として残された。

尾之上高哉・井口豊・丸野俊一(2017)
目標設定と成績のグラフ化が計算スキルの流暢性の形成に及ぼす効果
教育心理学研究 65(1): 132-144.

初等でも,高等でも,この種の教育研究における教員の影響を分析できるような例が増えてほしい。

その他の統計学上の話題は,私の研究室の解説リスト参照